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『インビクタス―負けざる者たち』 [映画]

日本語公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/invictus/

「プロジェクトX」のような成功譚、あるいはスポ根ものというものは世界のどこでも
基本的ストーリー展開というものは変わらないようだ。
私がかつて「力道山物語 怒涛の男」(1955年 森永健次郎監督)「若ノ花物語 
土俵の鬼」(1956年 森永健次郎監督)「川上哲治物語 背番号16」(1957年 
滝沢英輔監督)「鉄腕投手 稲尾物語」(1959年 本多猪四郎監督)を一挙に見て、
ストーリー展開等がほとんど同じで内容が混乱した記憶がある。
二時間半近くの本作においてもストーリーはサクサク進む。
本作において象徴的なものはラグビーというスポーツが引きずる階級性だと思う。
ラグビーフットボールの出自がパブリックスクールにあるために上中流階級のものと
いうイメージが強い。
日本においても興行としてのラグビーは代表やトップリーグよりも「いい大学」の対抗戦を
売る、売りやすい傾向にあり、「いい学校を出て、いい会社で社会人として続けるもの」と
思われていないか~その象徴が早明戦だろう。
「興行としてのラグビー」はメディアのみならず、学校のコンテンツともなっていると思う。
南アフリカにおいてもこちらのフットボールは黒人、あちらのフットボールは白人のものと
いうイメージが強かったようだ。
政府内においても大統領は官僚らに政府内残留を説得したように(注)、それが新生国家
統合の象徴としてわかりやすいスポーツ、ラグビー代表にそれを求める。
当初懐疑的だった政府や代表メンバーも大統領の求めに応えていく。
こういう作品が公開されると、日本でもこうでなければという思い込みが強くなり、「2019年
のワールドカップ自国開催のために日本も一つに」と言い出す人も出てくるだろうが、新しい
国ができた当時の南アフリカと成熟していると思われる日本では社会が違いすぎる。
広告代理店がどれだけ売ってくれるかの問題になる。
また、スポーツを巡る環境も二十世紀末当時とは変わっており、純粋に一つになれるとは思え
ない。
この映画で特筆すべき点は話す英語に簡単な単語が多く、非ネイティブにも聞きとりやすいと
いうこととロムー役の俳優が結構似ている点だ。
余談だが、オールブラックスの強さを大統領がスポーツ大臣に尋ねたときに「日本を145-17で
下しました」と言ったときに(客は三人しかいなかったが)つい吹き出してしまった。
カジノゴルフ三昧の代表。ギネスブックに載るようなとんでもない記録を打ち立てた代表。
1990年代当初の南アフリカ代表以上に困った存在だったと思う。
『サンデー毎日』2010年3月14日号において佐高信がこの映画を礼賛していたのはいいが、
ほめていたのは当時の大統領マンデラ氏であって、イーストウッド監督には一言も触れて
いなかった。
監督の政治的思想信条ゆえだとすれば、せこいと思う。

(注)当然のことながら、「赦す」ことのみらず、たとえかつてひどい目に遭わせた官僚たちでも
有能ならば、自らの下で使うことはある。

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