SSブログ

八月六日という日にあえて『はだしのゲン』に抗う [雑談]

中沢啓治『はだしのゲン』といえば、作者の原体験に基づく反核・反戦を題材とした漫画作品であり、世界的にも知られていると思います。当初は『週刊少年ジャンプ』に連載されておりましたが、版権の関係でジャンプヒーローとは扱われていないようですが。
作品の背景、連載当時の考え方もあるのですが、どうにも私にはここだけは違う、という点があるのですよ。キーワードは麦。亡父にいつも主人公のゲンは「麦になれ、踏まれても伸びる麦のような人間になれ」と言われていて、それが生きざまになるのですが、私のようにまず家の中の人間関係でつまづき、居心地の悪さを感じ、内外問わず思考や能力を疑われてきた人間には違和感を感じます。麦を踏む人間は踏むことによって麦が育つこと知っているがゆえに踏むのですが、人を踏む人間は大方の場合、踏みつけることによって人を潰そうとするものです。大事なのは、自分の尊厳を守るために、それに抗い、戦うことなのでしょうが、ゲンの生きた大日本帝国社会、それを多くの場合引き継いだその後の日本のようなところでは踏まれて潰されるだけとなることが多いと思います。助かるにはもっと弱い人間を踏みつけることだけの社会。

〔愛蔵版〕はだしのゲン 全10巻

〔愛蔵版〕はだしのゲン 全10巻

  • 作者: 中沢啓治
  • 出版社/メーカー: 汐文社
  • 発売日: 1993/04/01
  • メディア: 単行本



nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:コミック